慢性骨髄性白血病とは

こんばんは。宮下です。

「白血病」の中の「慢性白血病」の中の「慢性骨髄性白血病」のお話です。

英語では、「chronic myeloid leukemia」と言い、よく「CML」と略されます。


慢性=ゆっくり進む

骨髄性=リンパ球系以外の血液・骨髄(血液の工場)の細胞の総称

白血病=血液のもととなる細胞ががん化したもの


です。

自分で書いていてあれですが、わかりづらいですね。

私が患者さんに説明するときは、

「血液を造るためのon、offのスイッチが壊れてしまってどんどん血液をつくってしまう病気、血液のがん」

「放っておくときちんと働けない細胞が増えて、免疫力が落ちる=感染症、血が固められない=出血、貧血=心臓への負担、などが起こり命に関わる病気」

などと説明しています。


白血病というと、芸能人などでもたびたびニュースになり「こわい病気」というイメージが浮かびやすいかもしれません。

が、「急性白血病」と「慢性白血病」は似て非なるものです。

ちょっと詳しくみていきましょう。


【原因】

最近は多くのがんの原因として、「遺伝子の異常」が背景にあることがわかってきています。

「遺伝子」とは人間の設計図のことで、血液を造るにも設計図が要ります。

CMLもその遺伝子の異常が原因であり、染色体が一部入れかわってしまう「t(9;22)(q34;q11.2)」という染色体異常(転座)により引き起こされ、その結果できあがる「BCR-ABL」という通常存在しないはずの融合遺伝子が、血液を造るスイッチをずっとonにしてしまいます。

放射線の被ばくなどが原因となることがありますが、多くの場合その異常が起こる直接的な要因は明らかではありません。


【症状】

無症状で健診で偶然白血球増多を指摘され、「白血球が多いから詳しく調べてね」というようなかたちで血液内科へ紹介されるケースが多いです。

症状があるとすると、全身倦怠感、肝臓や脾臓が腫れることによる腹部膨満感、皮膚のかゆみ、胃潰瘍による症状などです。


【診断】

血液や骨髄の検査で、t(9;22)あるいはBCR-ABLを証明することにより診断します。

FISH法、G-band法、RT-PCR法などの検査があります。


【予後、治療法】

適切な治療によりこの病気が直接の要因で亡くなる方は「ほとんどいません」。

(添付画像参照、Hochhaus A et al: Leukemia 30: 1044, 2016)

ただ、治療せず放っておくと、白血球など増加はあるものの自覚症状に乏しい慢性期と呼ばれる状態から3~5年で移行期、そこから3~9か月の経過で急性転化期(急性白血病への移行)へ進展し致死的となります。


1960年にt(9;22)が発見され、1973年にはBCR-ABL融合遺伝子が発見されました。その後1992年にそこをターゲットにした薬剤(分子標的治療薬)であるイマチニブ(商品名:グリベック)が登場し、日本では2001年に承認されました。イマチニブはmagic bullet(魔法の弾丸)と呼ばれ、それまでの治療に劇的な変化をもたらし、CMLは薬さえ飲んでいれば多くの方で寿命をまっとうできる病気となりました。

現在ではイマチニブよりも有効性の高い、ニロチニブ(商品名:タシグナ)、ダサチニブ(商品名:スプリセル)、ボスチニブ(商品名:ボシュリフ)、ポナチニブ(商品名:アイクルシグ)といった薬剤も出てきており、治療選択肢が広がっています。

なお、有効性の差はありますが、イマチニブはその使用経験の多さ、安全性から今でも使われるお薬です。CML以外にお持ちの病気や、CMLの細かい特徴などによってどの薬剤を使用するか判断をしていきます。


現在では病気が十分にコントロールされたのちに、これらの薬剤を中止してみる、といった動きがあります。中止後も増悪することなく過ごせている方も一定数おり、治癒の可能性も考えられるようになってきました。一方で、中止を試みた人のうち、50%以上の方で増悪がみられており、現在日常診療の中で中止という選択は一般的ではなく推奨されていません。


【まとめ】

CMLは、以前は残念ながら死に至ることも少なくなかった病気ですが、現代ではうまくつきあっていける病気となっています。そうなってくると、この病気を持ちつつ長生きされる方もたくさんおられるわけで、高齢者医療という側面が出てきます。血液疾患をお持ちの方も問題なく在宅医療が選択肢となりますので、通院にお困りの方がいらっしゃいましたらぜひご相談ください。


前述の通り、多くのがんでその原因となる遺伝子異常がわかってきており、治療の対象とする敵がわかってきました。「〇〇がんだからこの治療」というよりも「〇〇遺伝子変異があるからこの治療」というような医療が今後ますます注目されていくこととなります。

医療は日進月歩です。私自身も常に知識のアップデートを心がけて診療にあたってまいります。


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